絵を描きたいという気持ち
一体何時からだろうねえ。気がつけば絵を描いていた。
別に漫画家を目指しているわけでもない。
絵で食べていこうとしているわけでもない。
生活の面で言えば別にしなくてもいい事に
何故自分はこうまでのめり込んでいるんだろう、と。
漫画は読むのが大好きだった。それは今でも変わらない。
好きな漫画を見よう見真似でよく写して遊んでいた。
多分、月並みには絵は描けていた方だったと思う。
小学生の時、中でもひときわ絵が上手い子が居た。
その子の前では恥かしくて、じぶんが描いた絵を見せる事は無かった。
中学の時、美術を習った事がない割にはそこそこ描けていた方だった。
しかし、またもやそこで絵が壊滅的に上手い子が居た。
それから自信を失い、また前のように描かなくなった。
高校のとき、現国の授業で教科書に載っているお話の中で、自分の好きな作品を絵にしてみようという宿題が出た。
今思えば相当ユーモラスある先生だったなあと思うのだが、ともかく宿題なので何か描かねばならない。
そして、描いて提出した。
どんな話だったかは正直もう覚えてはいないけど、確か戦争の話だった。
私が描いた絵は
(今思えば「ちょっとおかしいんじゃないのこの子?」と思われるぐらい)
色気のない筆ペンのみの広島の原爆ドームと廃墟と化した周りの風景だった事は良く覚えている。
その時、私は誰かに見せる為では無い絵を初めて描いた気がする。
自分の内面をただ表に出すだけの作業。乱暴で、粗雑で、品の無い絵。
先生が事前に自分が見たいだけだから、発表や公表はしないつもりと言っていたからだろうか。これでもかと画面を書きなぐっていた気がする。
戦争に対する自分の思いをただただ純粋に紙に写すと言うことに、不思議と今まで絵を描く時に必ずしも考えていた「どうやったら人にうけるのか」「こう描いた方がカッコイイんじゃないか」というのは無かった。
提出してから数日経って、現国の先生に呼び出された。
「やはりあの絵はまずかったかな」と思いつつ先生のところに行くと
「この絵をくれないか」と言う。
「??????????なんでですか?」と聞くと
先生は
「戦時中を思い出すからだ」と言った。
この絵を見て、忘れてはいけない事を思い出したからだ、と。
よくよく考えれば戦争など生身で知らない私が描いた絵などが、実際戦争を経験した御歳である先生をそう思わせることなどありえないのだが。
ともかく、先生は私にそう頼んできた。
元より私は他に誰にも見せるつもりも無かったから承諾し、その年卒業。その1年後その先生は退職なさった。
今、あの絵はどうなっているんだろうと思うけど、不思議とその絵に対しての執着は無い。
むしろ、あの絵を描いていた時の没頭感、集中力、そしてある種の恍惚感と言うべき感覚をもう一度体験したい。
私は絵が上手くなりたいというのは勿論あるけど、絵を描くということにかなり貪欲だと思う。
トーンや色、特殊効果など要らない。ただ、描く。
究極、線が引けるものがあればそれでいい。
私がプライベートで描いた絵は何枚かココに載せたことがあるけど他にもサインペンのみで描いた物や壁に筆で描いたものがある。(といってもそんなに大したもんでもないけど)
私の描いた絵が先生をはじめ、ただの数人にでも何かを思わせれたのならそれは嬉しい副産物であると思う。
だって、私はただ描きたいから描いている。それだけだから。